专利摘要:
本発明は、少なくとも一つのIgGFc領域がα2,6結合により各末端シアル酸部分に結合する少なくとも一つのガラクトース部分でグリコシル化され、該ポリペプチドが未精製の抗体に比してより高い抗炎症活性を有する、少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドを提供する。
公开号:JP2011506476A
申请号:JP2010538191
申请日:2008-12-12
公开日:2011-03-03
发明作者:ニンマージャン,フォーク;ラヴェッチ,ジェフリー;佳賢 金子
申请人:ザ ロックフェラー ユニバーシティー;
IPC主号:C07K16-00
专利说明:

[0001] 関連出願の相互参照
本出願は、2006年4月5日付で提出の、米国仮特許出願第60/789,384号の利益を主張する、2007年4月3日付で提出の、PCT特許出願第PCT/US07/08396号の一部継続出願である、2007年12月14日付で提出の、米国特許出願第11/957,015号の利益を主張し、これらはすべて、参考で本明細書中に引用される。本出願はまた、2005年11月7日付で提出の、米国仮特許出願第60/734,196号の利益を主張する、2006年10月27日付で提出の、PCT/US06/41791号の利益を主張する、2007年7月3日付で提出の、PCT特許出願第PCT/US07/72771号の一部継続出願であり、これらはすべて、参考で本明細書中に引用される。]
[0002] 連邦政府の資金による研究に関する説明
本発明に至る研究は、米国の国立衛生研究所 認可番号AI034662によって、一部支援された。したがって、米国政府は、本発明において特定の権利を有しうる。]
[0003] 発明の分野
本発明は、免疫疾患の治療のための治療用ポリペプチドの新規な設計方法に関する。]
[0004] 発明の背景
免疫グロブリンに対する細胞のレセプターは40年近く前に初めて同定されたが、免疫応答における中心的な役割はここ10年で発見されたにとどまる。免疫反応の末梢から中枢に向かう時期(afferent phase)および中枢から末梢に向かう時期(efferent phase)の双方においてそれらは中心的存在であり、B細胞活性化および抗体産生の閾値を設定し、樹状細胞の成熟を調節し、抗体反応の高い特異性を、食作用、抗体依存性細胞障害ならびに炎症性細胞の動員および活性化などのエフェクター経路に関連つける。体液性免疫システムを固有のエフェクター細胞に導く際のそれらの中心的役割により、それらは、in vivoにおける抗体活性を増強させるまたは制限するための魅力的な免疫治療用ターゲットとなる。]
[0005] 抗体および抗体−抗原複合体と、免疫システムの細胞との相互作用は、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)および補体依存性細胞障害(CDC)、食作用、炎症性メディエータの放出、抗原クリアランス、ならびに抗体半減期などの、種々の反応を引き起こす(Daron,Annu Rev Immunol,15,203−234(1997);Ward and Ghetie,Therapeutic Immunol,2,77−94(1995);Ravetch and Kinet,Annu Rev Immunol,9,457−492(1991)中で概説され、各々は、本明細書で参照として引用される)。]
[0006] 抗体定常領域は、直接的には抗原への抗体の結合に関与しないが、種々のエフェクター機能を示す。重鎖の定常領域のアミノ酸配列によって、抗体または免疫グロブリンを、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちいくつかはさらにサブクラス(イソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4;IgA1およびIgA2、に分けられる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。種々のヒト免疫グロブリンクラスのうち、ヒトIgG1およびIgG3がIgG2およびIgG4よりもより効果的にADCCを媒介する。]
[0007] 抗体のパパイン消化により、2つの同一の抗原結合フラグメントが生成するが、このフラグメントは、各々が単一の抗原結合部位を有するFabフラグメント、および、容易に結晶化できることを示す名前である、残りの「Fc」フラグメントと呼ばれる。Fc領域は、抗体のエフェクター機能の中心となる。ヒトIgGFc領域の結晶構造が決定されてきた(Deisenhofer,Biochemistry,20,2361−2370(1981)、これは本明細書に参照として引用される)。ヒトIgG分子において、Fc領域は、パパインでN末端からCys226までを切断することによって得られる。]
[0008] IgGは、Fcフラグメントによって媒介される相互作用を通じて、炎症性、および抗炎症性双方の活性を媒介すると長い間考えられてきた。したがって、Fc−FcyR相互作用は、免疫複合体および細胞障害抗体の炎症性特性に関与する一方、静脈内ガンマグロブリン(IVIG)およびそのFcフラグメントは、抗炎症性であり、炎症性疾患を抑制するために広く用いられる。そのような逆説的な特性の正確なメカニズムは不明であるが、IgGのグリコシル化がIgGの細胞毒性および炎症性の調節に重要であることが提案された。]
[0009] IgGは、その2つの重鎖の各々のCH2ドメイン中のAsn297に単一の、N−結合型グリカンを含む。共有結合した複合糖質は、N−アセチルグルコサミン(GIcNAc)およびマンノース(man)を含む、コアの二分岐ペンタ−ポリサッカライドから構成される。コア糖質構造のさらなる修飾が、可変的に見出されるフコース、分岐GIcNAc、ガラクトース(gal)および末端シアル酸(sa)部分の存在によって血清抗体中に見られる。それ故、40を超える異なる糖型が、この一つのグリコシル化部位に共有結合していることが見出されている。Fujii et al.,J. Biol. Chem 265,6009(1990)。IgGのグリコシル化は、2つの重鎖のオープン構造(open conformation)を維持することによって、全てのFcyRへの結合に不可欠であることが示されている。Jefferis and Lund,Immune.l Lett. 82,57(2002),Sondermann et al.,J. Mol. Biol. 309,737(2001)。このようにFcyR結合にIgGグリコシル化が絶対不可欠であることは、脱グリコシル化IgG抗体がADCC、食作用および炎症性メディエーターの放出などの、in vivoで誘発される炎症反応を媒介することができないことの説明となる。Nimmerjahn and Ravetch,Immunity 24,19(2006)。さらに、フコースを含むまたは欠くIgG抗体に対して報告された各々のFcyRに対して親和性が変化し、その結果として細胞毒性に影響を与えることにより、個々のIgGの糖型が炎症反応の調節に寄与しうるという知見が示唆された。Shieldset al.,J. Biol. Chem. 277,26733(2002),Nimmerjahn and Ravetch,Science 310,1510(2005)。自己免疫状態とIgG抗体の特定のグリコシル化パターンとの関連が、関節リウマチおよびIgG抗体のガラクトシル化およびシアル化の減少が報告されている幾つかの自己免疫血管炎の患者において見出されている。Parekh et al.,Nature 316,452(1985),Rademacher et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91,6123(1994),Matsumoto et al.,128,621 (2000),Holland et al.,Biochim. Biophys. Acta Dec 27;[印刷に先立つ電子出版]2005。IgG糖型の変化のin vivoにおける重要性は究明されていないものの、IgG糖型の変化もまた老化とおよび免疫処置時に関連することが報告されている。Shikata et al.,Glycoconj. J. 15,683 (1998),Lastra, et al.,Autoimmunity 28,25(1998)。]
[0010] したがって、in vivoにおけるIVIG特性の種々の知見を説明しうるポリペプチドの作製方法の開発が必要とされている。]
[0011] 発明の要約
本発明は、そのような方法および分子を提供することによって前述の要求を満たすものである。一態様において、本発明は、少なくとも一つのIgGFc領域を含み、未精製の抗体調製物とは性質の異なる単離ポリペプチドであって、該単離ポリペプチドのシアル化能(sialylation)が未精製の抗体調製物より高い、単離ポリペプチドを提供する。一実施形態では、該少なくとも一つのIgG Fc領域を有する単離ポリペプチドは、α2,6結合により各末端シアル酸部分に結合する少なくとも一つのガラクトース部分でグリコシル化され、該ポリペプチドが未精製抗体に比してより高い抗炎症活性を有する。一実施形態では、該少なくとも一つのIgG Fc領域を有する単離ポリペプチドは、α2,6結合により各末端シアル酸部分に結合する少なくとも一つのガラクトース部分でグリコシル化され、該ポリペプチドが未精製の抗体調製物に比してFc活性化レセプターに対する結合能が低い。さらなる実施形態では、Fc活性化レセプターがFcγRIIA、FcγRIICおよびFcγRIIIAからなる群より選択される。]
[0012] 一態様において、該単離ポリペプチドは、組換え源由来である。]
[0013] 他の態様において、本発明は、抗炎症活性のより高い少なくとも一のFc領域を有するポリペプチドおよび適当な担体または希釈剤を含む薬剤を提供する。]
[0014] 他の態様において、本発明は、Fc領域の多糖鎖のシアル化能(sialylation)を変更することを有する、Fc領域を有するポリペプチドの性質の調節方法を提供する。]
[0015] 一実施形態では、本方法は、末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖を有する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチド、および末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖が欠損する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチドを含む、少なくとも一のFc領域を含むポリペプチドの未精製源を用意し;さらに末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖が欠損する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチドに対する末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖を有する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチドの割合を増加させる、ことを有する。]
[0016] さらなる他の実施形態では、本発明は、それぞれが少なくとも一のIgGFc領域を有する、複数の単離されたポリペプチドを含む治療組成物を炎症性疾患の治療の必要のある患者に投与することを有する炎症性疾患の治療方法であって、各Fc領域の第1の部分は、ガラクトース部分が2,6結合によって各末端のシアル酸部分に連結してなる各炭水化物鎖を有し;該治療組成物の投与量は、それぞれが少なくとも一のIgG Fc領域を含み、ガラクトース部分が2,6結合によって各末端のシアル酸部分に連結してなる各炭水化物鎖を有する各Fc領域の第2の部分を有する、複数の単離されたポリペプチドを有する第2の組成物の投与量より少なく;さらに該第1の部分は、該第2の部分より大きく、これにより該治療組成物の投与量および該第2の組成物の投与量が実質的に同じ程度にまで炎症を抑制する、または該第1の部分は、前記第2の部分より大きく、これにより該治療組成物が同じ投与量の該第2の組成物より実質的により高い程度にまで炎症を抑制する、治療方法を提供する。]
図面の簡単な説明

[0017] 図面の簡単な説明
図1Aは、SNA+ FC結合のMALDI−Tof分析結果を示すものである。
図1Bは、SNA+ FC結合のMALDI−Tof分析結果を示すものである。
図1Cは、SNA+ FC結合のMALDI−Tof分析結果を示すものである。
図2は、シアル酸とガラクトースとのα2,6結合を増加させることにより、IVIGFcフラグメントの抗炎症性が向上することを示す実験を要約したものである。
図3は、シアル酸とガラクトースとのα2,6結合の除去により、IVIG Fcフラグメントの抗炎症性が低減することを示す実験を要約したものである。
図4は、細胞毒性の減少がガラクトースとシアル酸との結合に依存しないことを示すものである。
図5は、2,6シアル化IgGFcのin vivoでの抗炎症活性が単にIgG Fcグリカンの特性であることを示すものである。] 図1A 図1B 図1C 図2 図3 図4 図5
[0018] 発明の詳細な説明
本発明者らは、驚くべきことに、IgGFcドメインの細胞毒性および抗炎症反応が、Fcに結合したコア多糖のシアル化が異なることに起因することを見出した。IgG抗体の細胞毒性は、シアル化時に低減する;逆に、IVIGの抗炎症活性は増強される。IgG シアル化は、抗原特異的免疫反応の誘導時に調節されることが示され、したがって、抗原投与時に、定常状態の固有の抗炎症分子から、適応的、炎症性種に、IgGを転換する新規な手段を提供する。Fc−シアル化IgGはマクロファージ上の固有のレセプターに結合し、次に阻害性Fcγレセプター(FcγR)をアップレギュレートし、これにより自己抗体が仲介する病変に対する保護が生じる。概して、Ravetch and Nimmerjahn,J. Experim. Medicine 24(1):11−15(2007)を参照。本発明者らはさらに、驚くべきことに、抗炎症反応がガラクトース部分とシアル酸部分との結合の性質に依存することを見出した。IVIGの抗炎症活性がFcの正確なグリカン構造に依存するという知見は、本発明者らが標準的なFcレセプターではなく、特定のレクチンレセプターがこの経路に関連することを既に提案した(Y.Kaneko, F.Nimmerjahn,J.V. Ravetch,Science 313,670(2006);F.Nimmerjahn, J.V. Ravetch,J Exp Med 204,11(2007))モデルをさらに支持するものである。本発明の基礎となるデータは、2,6シアル化Fcの、調節骨髄細胞の集団で発現する同族レクチンレセプターへの結合が、炎症関節等の、炎症を起こした部位に位置する、エフェクターマクロファージの抑制性IgFcのトランスアップレギュレーション(trans upregulation)をもたらし、これにより細胞毒性IgGが活性化FcRを連結し(engage)、炎症反応を誘発するのに必要な閾値を上昇するモデルを支持する(F.Nimmerjahn,J.V. Ravetch,Science 310,1510(2005))。]
[0019] したがって、本発明の開示により、所望の細胞毒性および抗炎症性ポテンシャルを有するIgGの作製および選択の有利な戦略が提供される。]
[0020] 定義
本明細書および請求項を通じて、免疫グロブリン重鎖における残基のナンバリングは、本明細書に参照として明示的に引用される、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)に記載されるようなEU indexのものである。「Kabatに記載されるようなEU index」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。]
[0021] 「ネイティブ」または「親(parent)」という用語は、Fcアミノ酸配列を含む未修飾のポリペプチドを意味する。親ポリペプチドは、ネイティブ配列Fc領域または(付加、欠失および/または置換などの)予め存在するアミノ酸配列修飾を有するFc領域を含みうる。]
[0022] 「ポリペプチド」という用語は、少なくとも一つのIgGFc領域を含むタンパク質のいずれかのフラグメントおよびこのフラグメントを指し、以下に限定されるものではないが、例えば、抗体、例えばIgG抗体等の、十分に機能するタンパク質が挙げられる。本発明のポリペプチドを未精製の抗体調節物と比べる場合、このような調製物としては、具体的には、哺乳動物、例えば、ヒトドナー由来の、血液サンプル、血清サンプル、および/またはIVIGサンプルがある。この調節物は、分画されていなくともあるいは部分的に分画されていてもよいが、通常、約2〜4%のシアル化Fc含有タンパク質を含む。免疫抑制活性を有するように濃縮されたまたは配合された本発明の組成物は、通常、少なくとも約5%のシアル化Fc含有タンパク質またはそれ以上(例えば、5〜10%、10〜30%、30〜50%、50〜100%またはこれらの範囲もしくは合間)を含む。]
[0023] 「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC−末端領域を規定するために用いられる。「Fc領域」は、ネイティブ配列のFc領域であってもまたは変異Fc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化しうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位またはPro230位のアミノ酸残基からカルボキシル末端まで伸びると規定される。]
[0024] ヒトIgGFc領域の「CH2ドメイン」(「Cγ2」ドメインとも称される)は、通常、約231番目のアミノ酸から約340番目のアミノ酸まで拡がる。CH2ドメインは、他のドメインと密接に対をなさない点で特有である。むしろ、2つのN−結合分岐炭水化物鎖が、正常ネイティブIgG分子の2つのCH2ドメイン間に入っている。炭水化物は、ドメイン−ドメイン対の代わりとなり、CH2ドメインの安定化を助けると考えられている(Burton,Mol Immunol,22,161−206(1985)、これは参考で本明細書中に引用される)。]
[0025] 「CH3ドメイン」は、Fc領域中のC−末端からCH2ドメインまでの残基の拡がり(すなわち、IgGの約341番目のアミノ酸残基から約447番目のアミノ酸残基まで)を含む。]
[0026] 「ヒンジ領域」という用語は、一般的には、ヒトIgG1のGlu216からPro230までの拡がりとして定義される(Burton(1985))。他のIgGイソタイプのヒンジ領域を、最初および最後にシステイン残基を配置して、同じ位置に重鎖S−−S結合間(inter−heavy chain S−−S bond)を形成することによって、IgG1配列と並べてもよい。]
[0027] 「結合ドメイン」は、他の分子に結合するポリペプチドの領域を指す。FcRの場合、結合ドメインは、Fc領域との結合に関与するポリペプチド鎖(例えば、そのα鎖)の一部を含みうる。結合ドメインの一例としては、FcR鎖の細胞外ドメインがある。]
[0028] 「機能的Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域の部分的「エファクター機能」を少なくとも有する。「エフェクター機能」の例としては、C1q結合;補体依存性細胞障害;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター(B cell receptor);BCR)のダウンレギュレーションなどが挙げられる。このようなエフェクター機能は、通常、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変領域)に結合することを必要とし、例えば、本明細書で開示されているような種々のアッセイを用いて分析することができる。また、この用語は、フラグメントが本明細書に記載されるようなグリコシル化されるまたはグリコシル化に適当な少なくとも一つのアミノ酸を含む場合には、Fcフラグメントを包含する。]
[0029] 「ネイティブ配列Fc領域」は、天然で見出されるFc領域のアミノ酸配列に一致したアミノ酸配列を有する。「変異Fc領域」は、当業者によって認識されているように、少なくとも一つの「アミノ酸修飾」によりネイティブ配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する。好ましくは、変異Fc領域は、ネイティブ配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比べて少なくとも一つのアミノ酸置換、例えば、ネイティブ配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域において約1から約10アミノ酸置換、好ましくは約1から約5アミノ酸置換を有する。本明細書における変異Fc領域は、好ましくは、ネイティブ配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、より好ましくはこれらと少なくとも約90%の相同性、より好ましくはこれらと少なくとも約95%の相同性、より好ましくは少なくとも約99%の相同性を有するであろう。]
[0030] 「変化した(altered)グリコシル化」という用語は、上記で定義したような、特定の糖成分を増加させるかまたは減少させるように重鎖定常領域への炭水化物付加が操作される、ネイティブでのあるいは修飾されたポリペプチドを指す。例えば、Lec2またはLec3などの、特定の細胞系中で準備された抗体などの、ポリペプチドは、フコースやシアル酸などの糖部分の付着ができない可能性がある。]
[0031] 「Fcレセプター」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表すために用いられる。本発明の一実施形態において、FcRはネイティブ配列ヒトFcRである。他の実施形態においては、ヒトFcRを含むFcRは、IgG抗体に結合し(γレセプター)、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これにはこれらのレセプターの対立遺伝子多型および選択的スプライス型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)およびFcγRIIB(「阻害性レセプター」)を含むが、これらのレセプターは主としてこれらの細胞質ドメインにおいて異なる、同様のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターであるFcγRIIAは、細胞質ドメインにおいて、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(immuno receptor tyrosine−based activation motif(ITAM))を含む。阻害性レセプターであるFcγRIlBは、細胞質ドメインにおいて、免疫受容体チロシン系阻害性モチーフ(immuno receptor tyrosine−based inhibition motif(ITIM))を含む(Daron,Annu Rev Immunol,15,203−234(1997)のレビュー;FcRs are reviewed in Ravetch and Kinet,Annu Rev Immunol,9,457−92(1991);Capelet al.,Immunomethods,4,25−34(1994);およびde Haas et al.,J Lab Clin Med,126,330−41(1995),Nimmerjahn and Ravetch 2006,Ravetch Fc Receptors in Fundemental Immunology,ed William Paul 5th Ed.を参照、各々は本明細書に参照として引用される)。]
[0032] 「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」および「ADCC」は、FcRを発現する細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞やマクロファージ等の単球細胞)が標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、in vitroまたはin vivo細胞媒介反応を指す。原則として、活性化FcγRを有するエフェクター細胞はADCCを媒介する誘因となりうる。そのような細胞の一つである、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現し、一方、単球は活性化、局在化、または分化によって、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現することができる。造血細胞上のFcR発現は、本明細書に参照として引用される、Ravetch and Bolland,Annu Rev Immunol,(2001)に要約される。]
[0033] 「ヒトエフェクター細胞」は、一以上のFcRを発現し、エフェクター機能を行う白血球である。好ましくは、上記細胞は、例えば、FcγRlII等の活性化Fcレセプターの少なくとも一つの型を発現し、ADCCエファクター機能を果たす。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells(PBMC))、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、および好中球が挙げられ、PBMCおよびNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、本明細書で開示されているように、例えば血液またはPBMCなどのこれらの天然源から単離されうる。]
[0034] 「抗体」という用語は、最も広い意味で用いられ、特にモノクローナル抗体(完全長のモノクローナル抗体を含む)、ポリクロール抗体、多特異的抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物学的活性を示す限り抗体断片にまでわたる。]
[0035] 抗体の「シアル酸含有量」という語は、この語が文脈上他の意味を意図していることを明確に示唆していない限り、抗体の重鎖のFc領域上のシアル酸残基の総数および未精製抗体調製物中の非シアル化(asialylated)抗体に対するシアル化抗体の比率の双方を指す。]
[0036] 本発明の目的のために定義される際、「抗体断片(抗体フラグメント)」は、通常、完全な(intact)抗体の抗原結合もしくは可変領域またはFcR結合能力を保持している抗体のFc領域を含む、完全な抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、線状(linear)抗体;一本鎖抗体分子;および抗体断片から形成される多特異的抗体が挙げられる。抗体断片は、好ましくはIgG重鎖のヒンジおよび必要であればCHl領域の少なくとも一部を保持する。より好ましくは、抗体断片は、IgG重鎖の全定常領域を保持し、IgG軽鎖を含む。]
[0037] 本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同質の抗体集団(population)から得られる抗体を意味し、すなわち、当該集団を構成する個々の抗体が、少量で存在しうる、自然に起こりうる変異を除いて一致している。モノクローナル抗体は、非常に特異的で、単一の抗原部位に対して指向している。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して指向している異なる抗体を通常含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して指向している。修飾語の「モノクローナル」は、抗体の実質的に同質な集団から得られるような抗体の特徴を示し、特定の方法によって抗体を製造する必要があると解されるべきではない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、本明細書に参照として引用される、Kohler and Milstein,Nature,256,495−497(1975)によって最初に開示されたハイブリドーマ法によって作製されてもよいし、または組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照、これは、本明細書に参照として引用される)によって作製されてもよい。モノクローナル抗体はまた、Clackson et al.,Nature,352,624−628(1991)およびMarks et al.,J MoI Biol,222,581−597(1991)に開示されている技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい、なお、上記は本明細書に参照として引用される。]
[0038] 本発明の他の実施形態において、少なくとも一つのIgGFc領域を含むポリペプチドは、以下に限定されるものではないが、全タンパク質などの、他のタンパク質断片に融合されてもよい。当業者は、多くのタンパク質が、以下に限定されるものではないが、他の免疫グロブリン、特に、それぞれのFc領域を欠く免疫グロブリンなどの、本発明のポリペプチドに融合されうることを、確かに理解するであろう。あるいは、例えば、本明細書に参照として引用される、米国特許第6,660,843号に記載されているように、他の生物学的に活性なタンパク質またはその断片を、本発明のポリペプチドに融合してもよい。この実施形態は、そのような生物学的に活性なタンパク質またはその断片をFcレセプターを発現する細胞へデリバリーするのにとりわけ有利である。さらに、例えば、GSTタグもしくは緑色蛍光タンパク質、またはGFPなどの異なるマーカーを用いてもよい。]
[0039] 本明細書中に詳細に記載されるモノクローナル抗体は、所望の生物学的活性を発揮する限り、抗体断片のみならず、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種由来のまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列に一致するまたは相同するが、鎖の残りの部分は他の種由来のまたは他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列に一致するまたは相同する、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を包含する(米国特許第4,816,567号;Morrison et al.,Proc Natl Acad Sci USA,81,6851−6855(1984);Neuberger et al.,Nature,312,604−608(1984);Takeda et al.,Nature,314,452−454(1985);;国際特許出願第PCT/GB85/00392を参照、各々が本明細書に参照として引用される)。]
[0040] 非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ抗体である。大部分では、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラット、ウサギまたはヒト以外の霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基で置換される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、抗体性能をさらに向上させるためになされる。通常、ヒト化抗体は、少なくとも一つの、具体的には2つの可変ドメインを実質的に全てを含むが、可変ドメイン中、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FR残基の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFR残基である。ヒト化抗体はまた、必要であれば、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、具体的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含むであろう。さらに詳細には、Jones et al.,Nature,321,522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332,323−329(1988);Presta, Curr Op Struct Biol,2,593−596(1992);米国特許第5,225,539号を参照、各々が本明細書に参照として引用される。]
[0041] 本発明のポリペプチドは、例えば、配列番号:1等の、cDNAから組換えにより製造されてもよい。異なる実施形態のポリペプチドは、Fc領域またはその機能性フラグメントを含む。]
[0042] 少なくとも一つのIgGFc領域を含むポリペプチドとしては、特定のアミノ酸置換、付加または欠失が、重鎖定常領域をコードする遺伝子を修飾するために組み換えDNA技術を用いることによって親の配列に導入されるポリペプチドがある。これらの修飾の導入は、Molecular Cloning(Sambrook and Russel,(2001))などのマニュアルに記載されるのと同様にして、分子生物学のよく確立された技術に従う。加えて、少なくとも一つのFc領域を有するポリペプチドは、グリコシル化特異性について知られている細胞系での発現(Stanley P.,et al.,Glycobiology,6,695−9(1996);Weikert S.,et al.,Nature Biotechnology,17,1116−1121(1999);Andresen DC and Krummen L.,Current Opinion in Biotechnology,13,117−123(2002))によってまたは特定のレクチンの増加(enrichment)もしくは枯渇(depletion)によってまたは酵素処理(Hirabayashi et al.,J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci,771,67−87(2002);Robertson and Kennedy,Bioseparation,6,1−15(1996))によってのいずれかによって得られる、特定の炭水化物修飾を含むよう選択された上記ポリペプチドを含むであろう。抗体グリコシル化の質および程度は、用いられる細胞のタイプや培養条件によって異なることが本分野において知られている。(例えば、Patel et al.,Biochem J,285,839−845(1992))は、抗体が結合した糖側鎖中のシアル酸含有量が、抗体が腹水としてまたは血清を含まないもしくは血清を含む培地中で生産される際には、有意に異なることを報告している。さらに、Kunkel et al.,Biotechnol Prog,16,462−470(2000)は、細胞成長に異なるバイオリアクターを使用することおよび培地中の溶存酸素の量が抗体が結合した糖部分中のガラクトースおよびシアル酸の量に影響を与えることを示した。しかしながら、これらの研究は、様々なシアル酸残基量がどのようにin vivoでの抗体活性に影響を与えるかについては取り上げていなかった。]
[0043] ホスト発現系
本発明のポリペプチドは、N−結合型グリコシル化が可能なホスト発現系、すなわち、ホスト細胞中で発現させることができる。通常、このようなホスト発現系としては、細菌の、真菌の、植物の、脊椎動物または無脊椎動物の発現系が挙げられる。一実施形態において、ホスト細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系(例えば、CHO−K1;ATCCCCL−61)、Green Monkey細胞系(COS)(例えばCOS1(ATCC CRL−1650)、COS 7(ATCC CRL−1651));マウス細胞(例えばNS/0)、Baby Hamster Kidney(BHK)細胞系(例えば、ATCC CRL−1632もしくはATCC CCL−10)、もしくはヒト細胞(例えば、HEK 293(ATCC CRL−1573)もしくは293T(ATCC CRL−11268))、または例えば、American Type Culture Collection、Rockville、Md.等の公的な寄託機関から入手可能な他の適当な細胞系等の哺乳類細胞である。さらに、鱗翅目細胞系(Lepidoptora cell line)、例えばSf9、等の昆虫細胞系、植物細胞系、真菌細胞系、例えば、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、Hansenula spp等の酵母、またはB. subtilis等のBacillus、またはEschericiae coliを用いた細菌の発現系が使用できる。場合によっては、ヒトIgGのFcドメイン上で通常見られるように二分岐の複合糖となるためには、ホスト細胞への修飾がN−結合型グリコシル化およびグリカン成熟が確実に起こるために必要とされる場合もあることが理解されるであろう。]
[0044] 治療製剤
少なくとも一つのIgGFc領域を有するポリペプチドを含む治療製剤は、所望の精製度を有する本発明のポリペプチドを、必要であれば生理学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、保管用に製造されうる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)参照)。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、用いられる投与量および濃度で患者に無毒であり、これらとしては、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸およびメチオニン等の抗酸化剤;(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェニル、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール等の)防腐剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリン等の単糖、二糖、および他の糖質;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール等の糖;ナトリウムのような塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/またはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)等のノニオン界面活性剤が挙げられる。]
[0045] 本明細書における製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を有する化合物を含んでいてもよい。このような分子は、所望の目的に効果的な量で、適切に組み合わせて存在する。]
[0046] 活性成分はまた、それぞれ、コロイドドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)中にまたはマクロエマルション中に、例えば、コアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、取り込まれていてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol、A.Ed.(1980)に開示されている。]
[0047] 好ましい実施形態において、in vivo投与用に用いられる製剤は滅菌されている。本発明の製剤は、例えば、殺菌した濾過膜による濾過によって、容易に滅菌することができる。]
[0048] 徐放性製剤もまた準備されうる。徐放性製剤の適切な例としては、修飾抗体を含む固形疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、このマトリクスは、例えばフィルム、またはマイクロカプセルなどの、成形物の形態である。徐放性マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(例えば、米国特許第3,773,919号参照)、L−グルタミン酸およびyエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なマイクロスフェア)等の分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸等のポリマーは、100日以上分子の放出が可能であるが、ヒドロゲルの中にはより短い期間タンパク質を放出するものもある。カプセル化された抗体は長時間体内に残存すると、37℃で湿潤化される結果、変性または凝集し、その結果、生物学的活性が失われ、免疫原性が変化する可能性がある。安定化に対する合理的戦略が、関連するメカニズムによって考え出されうる。例えば、凝集メカニズムがチオール−ジスルフィド交換により分子間でS−−S結合形成であることが見出される際には、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、湿度量を制御し、添加剤を用い、そして特定のポリマーマトリクスを開発することによって達成されうる。]
[0049] 少なくとも一つのIgGFc領域を含むシアル化されたポリペプチドの作製
本発明のポリペプチドは、未修飾および/または未精製の抗体と比較してシアル酸の量が増加するように、さらに精製または修飾してもよい。この目的に到達するために多数の方法が存在する。一つの方法では、例えば、IVIG等の、未精製のポリペプチド源を、シアル酸に結合することが知られているレクチンを有するカラムに通過させる。当業者は、レクチンが異なれば、ガラクトースとシアル酸との間でのα2,6結合およびα2,3結合に対する親和性が異なることを理解するであろう。ゆえに、特定のレクチンを選択することにより、シアル酸とガラクトースとの間の所望の結合型を有する抗体を増加することができるであろう。一実施形態においては、レクチンをセウヨウニワトコ(Sambuccus nigra)から単離される。当業者であれば、セウヨウニワトコ(Sambuccus nigra)のアグルチニン(SNA)がα(2−6)結合によりガラクトースまたはN−アセチルガラクトサミンに結合するシアル酸に特異的であることを理解するであろう。Shibuya et al,J. Biol. Chem.,262:1596−1601(1987)。これに対して、イヌエンジュ(Maakia amurensis)(「MAA」)レクチンは、α(2−3)結合によりガラクトースに結合するシアル酸に結合する。Wang et al,J Biol Chem.,263:4576−4585(1988)。]
[0050] したがって、ガラクトースとシアル酸との間の所望の結合を有する少なくとも一つのIgGFc領域を含むポリペプチドのフラクションはカラム中に保持されるが、一方、このような結合をもたないフラクションは通過するであろう。少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドのシアル化フラクションは、異なるストリンジェンシー条件で別の洗浄液によって溶出されうる。このようにして、シアル酸含有量が通常の含有量と比較して増加する本発明のポリペプチドの調製物を得ることができる。さらに、シアリルトランスフェラーゼおよび、例えば、米国特許出願公開第2006/0030521号に記載されるようなシアル酸のドナーを用いた酵素反応を使用してもよい。]
[0051] 請求の範囲に記載される方法に使用できるシアリルトランスフェラーゼの適切な例としては、以下に限定されるものではないが、α−(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(sialyltransferase)(EC 2.4.99.6)、およびα−(2,6)シアリルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.1)とも称される、ST3Gal IIIがある。]
[0052] α−(2,3)シアリルトランスフェラーゼは、Gal−β−1,3GlcNAcまたはGal−β−1,4GlcNAcグリコシドのGalへのシアル酸の転移を触媒し(例えば、Wen et al.,J. Biol. Chem. 267:21011(1992);Van den Eijnden et al.,J. Biol. Chem. 256:3159(1991)を参照)、糖ペプチド中のアスパラギン結合オリゴ糖のシアル化に応答する。シアル酸は、2つの単糖間のα−結合(α−linkage)を形成してGalに連結する。単糖間の結合(連結)は、NeuAcの2位およびGalの3位間でおこる。この特有の酵素は、ラットの肝臓から単離することができ(Weinstein et al.,J. Biol. Chem. 257:13845(1982));ヒトのcDNA(Sasaki et al.(1993) J. Biol. Chem. 268:22782−22787;Kitagawa & Paulson(1994) J. Biol. Chem. 269:1394−1401)およびゲノム(Kitagawa et al. (1996) J. Biol. Chem. 271:931−938)DNA配列が知られており、これにより組み換え発現によってこの酵素を容易に製造できる。]
[0053] α−(2,6)シアリルトランスフェラーゼの活性は、6−シアル化ガラクトースなどの、6−シアル化オリゴ糖でみられる。「α−(2、6)シアリルトランスフェラーゼ」の名は、アクセプター多糖の6番目の原子にシアル酸を結合するシアリルトランスフェラーゼのファミリーを指す。様々なタイプのa−(2、6)シアリルトランスフェラーゼは様々な組織から単離されうる。例えば、この酵素の一つの特定の型である、ST6Gal IIは、脳および胎生組織から単離することができる。Krzewinski−Recchi et al.,Eur. J. Biochem. 270,950(2003)。]
[0054] さらに、平均的な当業者であれば、シアル化率を変化させるために細胞培養条件を操作することができることを理解するであろう。例えば、シアル酸含有量を増加させるためには、生成率を減少させ、培養される特定のホスト細胞に適切なより低い範囲内で浸透圧を通常維持する。シアル酸含有量を増加させるためには、約250mOsmから約450mOsmの範囲内の浸透圧が適切である。このおよび他の適切な細胞培養条件は、例えば、米国特許第6,656,466号に開示されている。Patel et al.,Biochem J,285,839−845(1992)では、抗体を腹水からまたは血清を含まない若しくは血清含有培養培地中で生産する場合では、抗体が結合した糖側鎖中のシアル酸の含有量は顕著に異なることが報告されている。さらに、Kunkel et al., Biotechnol. Prog.,16,462−470(2000)では、細胞成長を目的とした異なるバイオリアクターの使用および培地中の溶解酸素量が抗体が結合した糖部分中のガラクトースおよびシアル酸の量に影響を与えることが示されている。]
[0055] 別の実施形態において、例えば、不死化ヒト胎生期網膜細胞等の、ホスト細胞を、例えば、CMVプロモーター等の、プロモーターに操作して結合される、例えば、α−2,3−シアリルトランスフェラーゼまたはα−2,6−シアリルトランスフェラーゼ等の、シアリルトランスフェラーゼをコードする核酸を導入することによって修飾してもよい。このα−2,3−シアリルトランスフェラーゼは、SIAT4CまたはSTZ(GenBank受託番号:L23767)として知られ、例えば、米国特許出願公開第2005/0181359号に開示される、ヒトのα−2,3−シアリルトランスフェラーゼであってもよい。]
[0056] シアリルトランスフェラーゼをコードする核酸は、当業者に公知の方法によってホスト細胞中に導入されうる。外来の核酸配列を導入する適切な方法は、Sambrook and Russel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition),Cold Spring Harbor Press,NY,2000中にも開示されている。これらの方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マイクロインジェクションまたはエレクトロポーション等の物理的導入技術;例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション等のトランスフェクション;例えば、リポソームを用いた膜融合転写(membrane fusion transfer);および例えば、DNAまたはレトロウィルスベクターを用いた導入等のウィルスによる導入が挙げられる。]
[0057] 少なくとも一つのIgGFc領域を含むポリペプチドは、細胞上清から回収してもよく、また、このポリペプチドに、所望であれば、例えば、イオン交換またはアフィニティークロマトグラフィー等の一以上の精製段階を行なってもよい。適切な精製方法は、当業者にとって明白であろう。]
[0058] 当業者であれば、上述したシアル化方法の様々な組合わせによって、非常に高いシアル化レベルを有する少なくとも一つのIgGFc領域を含むポリペプチドを製造することができることを理解するであろう。例えば、上述したように、シアリルトランスフェラーゼを過剰発現したホスト細胞中で、少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドを発現させた後、例えば、酵素反応中でこれらのポリペプチドをシアル化し、続いてレクチンを含むカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーを行うことによって、これらのポリペプチドのシアル化フラクションをさらに濃縮してもよい。同様にして、酵素反応およびその後のアフィニティークロマトグラフィーを、少なくとも一つのIgG Fc領域を含むIVIG源に用いてもよい。]
[0059] 少なくとも一つのIgGFc領域を含むポリペプチドのグリコシル化の程度を調べるために、これらのポリペプチドを精製し、還元条件下SDS−PAGEにおいて分析することができる。グリコシル化は、特定のレクチンと単離されたポリペプチドを反応させることによって決定することができる、または、当業者によって認識されているように、糖型を同定するためにHPLC次いで質量分析を用いることができる。(Wormald,MRet al.,Biochem 36:1370(1997))。]
[0060] 本発明をより詳細に説明するために、幾つかの実施例を下記に記載するが、これらは本発明を限定するものではない。]
[0061] 実施例
実施例1.シアル酸含有量が増加したIVIGは、細胞毒性の減少を示す
IgGの特定の糖型が抗体のエフェクター機能を調節することに関与するかどうかを究明するために、特定のIgGモノクローナル抗体の細胞毒性を仲介する際の特定のAsn297に結合した炭水化物の役割を調べた。前記(6)で記載されるのと同様にして293個の細胞中でIgG1、2aまたは2bスイッチ変異体のいずれかとして発現している、6A6ハイブリドーマ由来の、抗血小板抗体を質量分析によって分析し、これらの具体的な炭水化物組成および構造を決定した。これらの抗体は、最小限のシアル酸残基を含む。セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)レクチンアフィニティークロマトグラフィーによるシアル酸含有種の濃縮(enrichment)によって、シアル酸含有量が60〜80倍高い抗体を産生した。シアル化および非シアル化6A6−IgG1および2b抗体の血小板クリアランスを媒介する能力を比較すると、シアル化とin vivo活性との間で逆相関を示した。6A6IgG抗体のシアル化により、生物学的活性が40〜80%低下した。]
[0062] このような活性の減少のメカニズムを究明するため、マウスFcYRの各々に対するおよび同族の抗原に対するこれらの抗体について、表面プラズモン共鳴結合を行った。]
[0063] 表面プラズモン共鳴分析は、Nimmerjahn and Ravetch,Science 310,1510(2005)に記載されているのと同様にして行なった。簡潔に述べると、糖側鎖中のシアル酸残基レベルが高いまたは低い6A6抗体変異体を、CM5センサーチップの表面上に固定化した。可溶性Fcy−レセプターを、30μI/分の流量でHBS−EPランニングバッファー(10mM Hepes、pH 7.4、150mM NaCl、3.4mMEDTA、および0.005%界面活性剤P20)中で室温にてフローセルを通じて異なる濃度で注入した。可溶性Fc−レセプターを3分間注入し、7分間結合分子の解離を観察した。コントロールフローセルに対するバックグラウンド結合性を自動的に引いた。物質移動の制限を排除するためにコントロール実験を行なった。会合相および解離相に対する同時フィッティングならびに一連の全てのカーブに対するグローバルフィッティングを用いて、親和定数をセンサーグラムデータから誘導した。1:1ラングミュア結合モデルが観察されたセンサーグラムデータに緊密に適合したため、全ての実験においてこれを用いた。]
[0064] 各々の活性化FcyRに対するこれらのシアル化型の抗体で、非シアル化型のカウンターパートと比較して、結合親和性が5〜10倍減少することが観察された一方で、抗原に対する結合親和性では何ら相違が観察されなかった。IgG2bは、活性化レセプターであるFcyRIIIに対するIgG1の結性に比べて、活性化レセプターであるFcyRIVに対してより高い親和性で結合するため、シアル化の効果として、活性化レセプターであるFcyRIIIに対する非シアル化IgG1結合親和性に匹敵する活性化レセプターであるFcyRIVに対するIgG2bの結合親和性を生じることがある。活性化レセプター結合性のこのような定量的な相違のこの効果は、非シアル化IgG1の活性に匹敵するin vivo活性を示すシアル化IgG2bで認められる。同様にして、IgG1のシアル化により、7倍(factor)ほど、活性化レセプターであるFcyRIIIに対するすでに低い結合親和性が低減し、これにより生理学的に不活性な抗体が生産される。ゆえに、IgGのAsn297結合グリカン構造のシアル化は、サブクラス−限定的活性化FcyRに対する結合親和性の減少をもたらし、したがってin vivo細胞毒性の減少をもたらした。]
[0065] IgGのN−結合型グリカンのシアル化がin vivoでの炎症活性を調節することに関与しているという考察の一般性を究明するために、我々は、次に、IVIGの抗炎症活性におけるN−結合型グリカンの役割を調べた。5〜10、000ドナーのプールされた血清から得られるこの精製IgGフラクションは、高投与量(1〜2g/kg)で静脈内投与されると、広く炎症性疾患の処置を目的とした治療に用いられる。Dwyer,N. Engl. J. Med. 326,107(1992)。この抗炎症活性は、Fcフラグメントの特性であり、ITP、RAおよび腎毒性腎炎のネズミモデルで保護特性を示す。Imbach et al.,Lancet 1,1228(1981),Samuelsson et al.,Science 291,484(2001),Bruhns et al.,Immunity 18,573(2003),Kaneko et al.,J. Exp. Med. 203(3):789−97(2006)。]
[0066] この抗炎症活性の共通のメカニズムは、エフェクターマクロファージの阻害性FcyRIIB分子の表面発現を誘導し、それにより細胞毒性IgG抗体または免疫複合体が活性化FcyR誘発によってエフェクター細胞反応を誘導するのに必要とされる閾値が上昇することが報告された。Nimmerjahn and Ravetch,Immunity 24,19(2006)。]
[0067] 実施例2. IVIGの脱シアル化がマウス関節炎モデルでIVIGの抗炎症効果を減少させる
マウス
C57BL/6およびNODマウスは、Jackson Laboratory(バーハーバー、メイン州)から購入した。FcyRIIB−/−マウスは、本発明者の研究室で作製され、C57BL/6バックグラウンドに対して12世代戻し交配された。C57BL/6バックグラウンド(K/B)のKRN TCRトランスジェニックマウスは、D.MathisおよびC.Benoist(ハーバードメディカルスクール、ボストン、マサチューセッツ州)から贈与され、NODマウスと交配させて、K/BxNマウスを作製した。8〜10週齢のメスマウスを全ての実験に用い、ロックフェラーユニバーシティ動物施設で飼育した。]
[0068] 血清を前記と同様にして調製した(Bruhns,et al.,Immunity 18,573(2003))。簡潔にいうと、血清を、K/BxNマウス(6〜12週齢)から集めた血液から分離する。数週間分の血清収集物を一緒に貯めて、アリコートに分けて凍結すて、ここで記載される全ての実験に使用した。1.5倍希釈したK/BxN血清(1gのマウスあたり、4μlの貯溜したK/BxN血清)を1回静脈内注射して、関節炎を誘導した。関節炎を臨床検査によって採点した。4本足全ての指標を付加する:0[非罹患]、1[1関節の腫れ]、2[1超の関節の腫れ]、および3[全ての足で重篤な腫れ]。IVIGをK/BxN血清を注射する1時間前に注射する。数匹のマウスに6A6−IgG2b抗体が枯渇した血小板5μgを投与し、Advia120ヘマトロジーシステム(Bayer)を用いて処置してから2、4、および24時間後に、血小板数を測定した。全ての実験は連邦法および機関ガイドラインにしたがって行われ、ロックフェラーユニバーシティ(ニューヨーク、ニューヨーク州)によって認証された。]
[0069] 抗体および可溶性Fcレセプター
293T細胞の一過性トランスフェクションを行ない、次いで上記と同様にしてプロテインGにより精製することによって、6A6抗体スイッチ変異体を作製した。Nimmerjahn and Ravetch,Science 310,1510(2005)。シアル酸リッチな抗体変異体を、Sambucus nigra agglutinin(SNA)アガロース(Vector Laboratories、バーリンゲーム、カリフォルニア州)を用いたレクチンアフィニティークロマトグラフィーによってこれらの抗体調製物から単離した。シアル酸含有量が高いことは、レクチンブロットによって確認した(下記参照)。静脈注射用ヒト免疫グロブリン(IVIG、10%マルトース中5%、クロマトグラフィー精製)は、Octapharma(Hemdon、バージニア州)から購入した。ヒトIVIGの消化を行なった。Kaneko Y. et al.,Exp. Med. 203(3):789−97(2006)。簡単に述べると、IVIGを37℃で1時間0.5mg/mlパパインによって消化し、2.5mg/mlヨードアセトアミドを添加することによって止めた。得られたFabおよびFcフラグメントを、HiPrep 26/60 S−200HRカラム(GE Healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)で、未消化IVIGから分離した後、プロテインGカラム(GE Healthcare)およびプロテインLカラム(Pierce、ロックフォード、イリノイ州)を用いてFcおよびFabフラグメントを精製した。フラグメントの純度は、抗−ヒトIgGFabまたはFcに特異的な抗体(Jackson ImmunoResearch、West Grove、ペンシルバニア州)を用いて免疫ブロット法によって確認した。純度は、99%より高いと判断された。F4/80抗体はSerotec(オックスフォード、イギリス)社製である。Ly 17.2抗体は、Caltag(バーリンゲーム、カリフォルニア州)社製である。ヒツジ抗糸球体基底膜(GBM)抗血清(腎毒性血清(nephrotoxic serum)、NTS)は、M.P.Madaio(ペンシルバニア大学、フィラデルフィア、ペンシルバニア州)から贈与された。C−末端のヘキサ−ヒスチジンタグを含む可溶性Fcレセプターを、293T細胞の一過性トランスフェクションによって作製し、製造元(Qiagen社)によって示されるのと同様にして、Ni−NTAアガロースを用いて細胞培養上清から精製した。]
[0070] IVIGをノイラミニダーゼで処理し、得られた調製物の組成および構造を質量分析によって分析した。ノイラミニダーゼ処理後には、グリカンを含むシアル酸は何ら検出されなかった。次いで、これらのIgG調製物について、IgG1免疫複合体が仲介する炎症性疾患モデルである、KxN血清の受動伝達によって誘発される関節炎からマウスを保護する能力を試験した。ノイラミニダーゼによる脱シアル化は、KxN血清誘発性関節炎モデルにおいてIVIG調製物の保護効果を消滅させた。この活性の消失は、非シアル化IgG調製物の血清半減期の減少の結果またはIgGの単量体組成もしくは構造的完全性への変化の結果ではなかった。PNGaseを用いた全てのグリカンの除去は同様の効果を有し、in vivioでのIVIGの保護効果を消滅させた。]
[0071] 実施例3.シアル酸含有量が高いIVIGフラクションはマウス関節炎モデルにおいて炎症を抑制する
シアル酸含有量が増加したIVIGの調製
シアル酸はIVIGの抗炎症活性に必要であると思われるので、この抗炎症活性には高投与量(1g/kg)が必要であるという根拠は、全IgG調製物中のシアル化IgGの限定濃度でありうる。IVIGをSNA−レクチンアフィニティカラムで分画して、シアル酸修飾グリカン構造が濃縮されたIgG分子を得た。]
[0072] これらのシアル酸濃縮フラクションについて、未分画のIVIGと比較した、KxN血清転移関節炎モデルにおける保護的効果を試験した。未分画のIVIGが1g/kgであったのに対して、SNA濃縮IVIGでは0.1g/kgで同等の保護が得られたため、10倍の保護増強がSNA−結合フラクションで観察された。SNA濃縮フラクションの血清半減期およびIgGサブクラス分布は、未分画のIVIGのものと同等であった。シアル化の効果は、IgGに特異的であった;同じような2分岐の(bi−antennary)、複合炭水化物構造を有するフェチュインまたはトランスフェリン等のシアル化N−結合型グリコプロテインは、等モル濃度のIgGで統計学的に有意な抗炎症活性を示さなかった。最後に、シアル化IVIG調製物の保護機構は、FcyRIIB発現に依存し、エフェクターマクロファージでのこの阻害性レセプターの発現の増大をもたらすという点で、未分画のIVIGと同様であった。]
[0073] 実施例4.シアル酸含有量が増加したIVIGの抗炎症反応の向上はFcドメインのN−結合型グリカンのシアル化によって仲介される
IVIGのポリクローナルIgGもまたシアル化されうる軽鎖または重鎖可変領域のOおよびN結合型グリカンを含むので、我々は、SNA−リッチなIgG調製物の抗炎症活性の増加がFc上のN−結合型グリコシル化部位のシアル化が増加した結果であることを、確認した。Fcフラグメントは、未分画化のおよびSNA分画されたIVIGから作製し、それらのin vivo活性を試験した。インタクトIgGで観察されたように、未分画化のIVIGから作製したFc−フラグメントと比較した場合に、SNA−精製Fcフラグメントはin vivoにおける保護効果を向上した。これに対して、Fabフラグメントはこのin vivoアッセイにおいて何ら抗炎症活性を示さなかった。したがって、IVIGの抗炎症活性には高投与量が必要であることは、全調製物中に存在するシアル化IgGの寄与が小さいことに起因している可能性がある。シアル酸結合レクチンクロマトグラフィーによってこれらのフラクションを濃縮することは、その結果として抗炎症活性を増加した。]
[0074] IgG抗体の受動免疫を用いたこれらの結果から、炎症性種から抗炎症種へと切り替えるIgGの能力がFcドメインのN−結合型グリカンのシアル化の程度の影響を受けることが示された。]
[0075] 実施例5.IgGのシアル化によって媒介される、抗炎症活性の増加は、活性免疫反応中に起こる
グッドパスチャー症候群のマウスモデル
このモデルでは、マウスを最初にアジュバントを併用したヒツジIgGで感作し、4日後にヒツジ抗マウス糸球体基底膜調製物(腎毒性血清、NTS)を注射した。簡単に述べると、CFAにおけるヒツジIgG(Serotec)200μgをマウスに腹腔内に予め免疫した後、4日後に体重グラムあたりNTS血清2.5μlを静脈内注射した。血液を、抗GBM抗血清を注射してから4日後に未処理コントロールマウスから集め、血清IgGをプロテインG(GE Healthcare、プリンストン、ニュージャージー州)およびNHS−活性化セファロースカラム(GE Healthcare、プリンストン、ニュージャージー州)にヒツジIgGを共有結合することによって作製される、セファロース結合ヒツジIgGカラム、アフィニティークロマトグラフィーで精製した。]
[0076] 予備感作、続いてのNTS処理により、マウスIgG2b抗−ヒツジIgG抗体を誘発する(NTN免疫付与)。Kaneko Y. et al.,Exp. Med., 203:789(2006)。マウスIgG2b抗体は、NTS抗体とともに糸球体中に蓄積され、浸潤性マクロファージのFcyRIVのIgG2b媒介活性化による急性劇症炎症反応をもたらす。予備感作がない場合には、炎症は観察されないことから、マウスIgG2b抗−ヒツジIgG抗体は炎症性反応のメディエーターであることが示される。]
[0077] 炎症促進性IgG(pro−inflammatory IgG)をもたらす能動的な免疫処置(active immunization)がシアル化の変化と関連するかどうかを究明するために、免疫処置前のおよびNTSで免疫処置されたマウスの血清IgGおよびIgMについて、SNAレクチン結合によってシアル酸含有量を特性化した。全IgGシアル化は、免疫処置されていないコントロールと比較して、免疫処置されたマウスで平均で40%減少した。この効果はIgGに特異的であった;IgMのシアル化は免疫処置前および免疫処置後で同等であった。マウス血清のヒツジ特異的IgGフラクションを分析すると、このシアル化の相違はより顕著であり、免疫処置前のIgGと比較してシアル化が50〜60%減少したことが示された。]
[0078] これらの結果は、MALDI−TOF−MS分析によって確認された。単糖組成分析は、UCSD Glycotechnology Core Resource(サンディエゴ、カリフォルニア州)によって行なった。糖タンパク質サンプルを、SDSおよび2−メルカプトエタノールで変性し、PNGase Fで消化した。放出されたN−グリカン混合物は逆相HPLCおよび固相抽出によって精製した後、N−グリカンの露出した水酸基をメチル化した。得られた誘導体化単糖類を逆相HPLCで再度精製し、MALDI−TOF−MSにかけた。]
[0079] 免疫処置前および免疫処置後のIgGの分析によって、N−グリカン構造の変化が末端シアル酸部分に特異的であることが確認された。FcyRIV産生のエンゲージメント(engagement)に応答することが以前に示された、糸球体、浸潤性マクロファージ中に蓄積されるマウスIgG2b抗−ヒツジ抗体は、免疫処置前のコントロールと比較してシアル酸含有量が減少した。]
[0080] 実施例6. IVIGにおけるシアル酸とガラクトースとの結合の分析
SNA+(Sambuccus Nigra Agglutinin)IVIG Fc結合のSequential Maldi−Tof分析を行ない、上記したITP、RAおよび腎毒性腎炎モデルで保護特性を示したシアル化IgGFcフラクションの構造を決定した。Maldi−Tofで生じたグリカンピークを単離し、さらに分画して、ガラクトース−シアル酸構造が得られるまで再分析した。in vivoで抗炎症活性を有する高濃度のガラクトース−シアル酸構造物のフットプリントヒストグラム(図1A)を、シアル酸結合の標準物である、α2−3シアリルラクトース(図1B)およびα2−6シアリルラクトース(図1C)のヒストグラムと比較した。標準物質の付号のついたピーク(signature peak)は矢印で示され、それぞれ、α2−3(図1B)またはα2−6(図1Aおよび図1C)では矢印で示され、サンプルから得られたピークと比較する。] 図1A 図1B 図1C
[0081] 実施例7. IVIGFcフラグメントのin virtoでのグリコシル化によるα2,6結合の濃縮により、IVIGの抗炎症特性が向上する
図2Aで示されるように、IVIG FcフラグメントのグリカンMaldi−TofMS分析から、末端にガラクトースが存在しない(ピークG0)、1個のガラクトースが存在する(ピークG1)、2個のガラクトースが存在する(ピークG2)、またはシアル酸が存在する(「末端シアル酸」と記載される括弧で示される)構造物が示される。2,3または2,6シアル化IgGFcのin vivo活性を測定するために、サンプルをシアリダーゼで処理した後、ガラクトーストランスフェラーゼで処理して、G0(ガラクトースなし)およびG1(1個のガラクトース)をG2(完全にガラクトシル化)に変換して、シアル化の可能性のある部位を増やした。図2Bに示されるように、ECLおよびクマシーをのせたコントロールによって測定される末端ガラクトースの相対的なバンド強度比を比較することによって、過剰ガラクトシル化(hypergalactosylation)が確認された。in virtoのシアル化を、α2−6シアリルトランスフェラーゼ(「ST6Gal」)またはα2−3シアリルトランスフェラーゼ(「ST3Gal」)のいずれかを用いて行ない、SNA(上段)ではα2−6結合またはECL(中段)およびクマシー(下段)ではα2−3結合をレクチンブロットによって確認した。シアル化Fcがin vitroで炎症を阻害する能力を評価する(図2D)ために、マウスに、0.66mgのα2−6シアル化Fc(黒三角)または0.66mgのα2−3シアル化Fc(赤三角)のいずれかを投与した。1時間後、0.2mlのK/BxN血清を投与し、足底の腫れ(臨床スコア)を次の7日間モニターした。抗炎症活性は、2,6シアル化IgG Fcフラグメントでは観察されたが、2,3シアル化分子では観察されなかった。これらの結果は上記データと一致し、これから2,6シアル酸−ガラクトースの優先的結合がシアル化IgGの抗炎症活性に関与していることが示される。] 図2A 図2B 図2D
[0082] 実施例8. 2,3シアル酸結合ではなくα2−6シアル酸結合を除去すると、IVIGの免疫抑制特性が無効にされる
IVIGを結合に特異的なシアリダーゼ(SA)で処理し、消化物をレクチンブロットで確認した(図3A)。上段は、IVIGのα2−6結合(左レーン)、およびα2−3SA tx IVIG(中央レーン)では染色が確認され、陽性Sambucus nigraレクチン(SNA)を示すが、α2−3,6SA tx IVIG(右レーン)では染色が確認されなかった。中段は、α2−3シアル酸結合に関するドットブロットであり(MAL I)、フェチュイン陽性コントロールでのみ陽性の染色が示される;100μgのタンパク質を1ドット当たりのせる。下段は、クマシーをのせたコントロールを示す。10μg/レーンがブロットおよびゲルで示される。シアル酸部分の特異的な除去効果を調べるために、マウスに、1g/kgのIVIG調製物を投与した後、200μlのK/BxN血清を投与した。図3Bに示されるように、K/BxN血清が投与されたマウス(白丸)では、1週間の間中、臨床スコアによって測定される際の、足底の腫れが観察された。IVIGで処置されたマウス(黒三角)では、α2−3SA tx IVIGで処置されたマウス(白三角)と同様、わずかなむくみが観察されたが、α2−3,6SA tx IVIGが投与されたマウス(四角)は足底の腫れが保護されなかった。] 図3A 図3B
[0083] 実施例9.細胞毒性の減少は、シアル酸とガラクトースとの結合の性質に依存しない
本発明者らは、IgGのFcドメインと関連するN−結合型グリカンのシアル化によりFcR結合が低減し、これによりA/I比(Kaneko,et al.,Science 313,670(2006))、すなわち、個々の活性化(A)または阻害(I)IgGFcレセプターに対するIgG Fc結合に関する親和定数由来の値が減少することを既に示している。この比は、特定のIgG Fcに対するin vivo細胞毒性を予測することが示される(F.Nimmerjahn,J.V.Ravetch,Science 310,1510(2005))。したがって、Fcシアル化は、ADCCのin vitroモデルに加えて、誘導型血小板減少症モデルでのIgG抗体の細胞毒性を低減した(Kaneko,et al.,Science 313,670(2006),Scallon,et al.,MoI. Immunol 44,1524(2007))。したがって、本発明者らは、このFcR結合および細胞毒性の減少がシアル酸−ガラクトース結合の影響を受けるかどうかを究明することを開始した。血小板消費をもたらすことが既に示されている抗血小板IgG2bモノクローナル抗体を上記と同様にしてin vitroでシアル化し、in vivo活性を試験した。末端2,3および2,6双方をin vitroでシアル化したIgG Fcは、血小板減少症のin vivoモデルで、この抗血小板抗体、6A6−IgG2bの細胞毒性を減少し(図4)、これは以前の研究結果と一致する(Kaneko,et al.,Science 313,670(2006),Scallon,et al.,MoI. Immunol 44,1524(2007))。ゆえに、IgG抗体の細胞毒性へのFcシアル化の効果は、最後から2番目のガラクトースへの結合の特異性に依存しない。] 図4
[0084] これに対して、シアル化IgGFcフラグメントの抗炎症活性(本発明者らが標準的なIgGFcレセプターに依存しないことを示した特性(F. Nimmerjahn, J.V. Ravetch,Science 310,1510(2005);F. Nimmerjahn, J.V. Ravetch,J Exp Med 204,11(2007))は、図3Bに示されるように、2,6シアル酸−ガラクトース結合に対して明らかな優先を示した。] 図3B
[0085] これらの結果はさらに、IVIGの抗炎症特性が標準的なFcγRへの結合に関与しない異なる経路を介して仲介される(このことは、従来認められているモデル(F. Nimmerjahn, J.V. Ravetch,Science 310,1510(2005);F. Nimmerjahn, J.V. Ravetch,J Exp Med 204,11(2007)とは際立って対照的である)という本発明者らの従来の考察を支持する。]
[0086] 実施例10. 2,6シアル化IgGFcのin vivo抗炎症活性は、単にIgG Fcグリカンの特性である
2,6シアル化IgG Fcのin vivo抗炎症活性が単にIgG Fcグリカンの特性であり、異種のIVIG Fc調製物で見出される他の成分の結果ではないことを十分示すために、シアル化IVIG Fcの抗炎症活性を、293T細胞で発現するcDNA(配列番号:1)由来の、同質の組換えヒトIgG1 Fc基質(rFc)を用いて概括した。精製した組換えヒトIgG1Fcフラグメントを、β1,4ガラクトシル化によって、次に、2,6シリル化によって、上記と同様、in vitroでグリカン操作した(図5A)。調製物を精製し、in vivo分析前に、レクチンブロットおよびMALDI−TOF分析(図5A)によって特性を明らかにした。ECLで末端ガラクトース(上段)、SNAでα2,6シアル酸(中段)についてレクチンブロットでグリコシル化を確認し、およびクマシーをのせたコントロールを下段に示す。] 図5A
[0087] マウスに、IVIG、SNA+IVIG Fc、またはシアル化rFc(2,6ST rFc)を1時間投与した後、K/BxN血清を投与し、次の数日間にわたって足底の腫れをモニターした。図5Bに示されるように、2,6シアル化組換えヒトIgG1Fcフラグメントは、IVIG誘導性シアル酸増加Fcフラグメント(IVIG-derived sialic- enriched Fc fragment)(SNA+IVIG Fc)またはin vitro2,6シアル化IVIG誘導性Fcフラグメント(in vitro 2,6 sialylated IVIG-derived Fc fragment)(2,6ST IVIG Fc)のいずれかで得られたものに匹敵する抗炎症活性を示した。1群あたり4〜5匹のマウスの臨床スコアの平均および標準偏差をプロットする;*は、Kruskal−Wallis Anova、さらにはDunn’s post hocによって測定される際にp<0.05であることを示す。] 図5B
[0088] これらの調製物はそれぞれ、30mg/kgで活性があり、これに比して、天然のIVIGでは1,000〜2,000mg/kgが必要であった(表1)。]
[0089] ]
実施例

[0090] 本明細書で引用される全ての特許および非特許文献は、これらの特許および非特許文献の各々が全体で参照によって本明細書に組み込まれる範囲で本明細書に組み込まれる。さらに、本明細書の発明がたとえ特定の例や実施形態を参照して説明されているとしても、これらの実施例や実施形態は、本発明の原理および用途を単に詳細に説明するにすぎないと理解されるべきである。したがって、詳細な実施形態には多数の修飾が可能であり、下記特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から外れない限り、他の改変が考え出されうることが理解されるべきである。]
权利要求:

請求項1
少なくとも一つのIgGFc領域を含み、未精製の抗体調製物とは性質の異なる単離ポリペプチドであって、該単離ポリペプチドのシアル化能(sialylation)が該未精製の抗体調製物より高い、単離ポリペプチド。
請求項2
該少なくとも一つのIgGFc領域がα2,6結合により各末端シアル酸部分に結合する少なくとも一つのガラクトース部分でグリコシル化され、該ポリペプチドが未精製の抗体調製物に比してより高い抗炎症活性を有する、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
請求項3
該少なくとも一つのIgGFc領域がα2,6結合により各末端シアル酸部分に結合する少なくとも一つのガラクトース部分でグリコシル化され、該ポリペプチドが、未精製の抗体調製物に比して、FcγRIIA、FcγRIIC及びFcγRIIIAからなる群より選択されるFc活性化レセプターへの結合能が低い、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
請求項4
ヒヒトのIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4Fc領域を有し、未精製抗体に比してα2,6結合により各末端シアル酸部分に結合する少なくとも一つのガラクトース部分の含量がより高い、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
請求項5
天然に存在する抗体源または組換え抗体源由来である、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
請求項6
該未修飾抗体がIVIGを有する、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
請求項7
組み換え源から生産され、Fab領域を欠損し、該少なくとも一つのIgGFc領域が2つのガラクトース部分でグリコシル化される、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
請求項8
配列番号:1を有する核酸配列によってコードされる、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
請求項9
タンパク質の多糖鎖における少なくとも一つのガラクトース部分と各末端シアル酸とのα2,6結合を生成する活性が向上した細胞系由来である、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
請求項10
α2−6シアリルトランスフェラーゼによる処理によって修飾される、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
請求項11
Fc領域の多糖鎖のシアル化能を変更することを有する、Fc領域を有するポリペプチドの特性の調節方法。
請求項12
該特性が、未精製の抗体より高い抗炎症活性を有する、請求項11に記載の方法。
請求項13
該シアル化能を変更する段階が、末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖を有する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチド、および末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖が欠損する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチドを含む、少なくとも一のFc領域を含むポリペプチドの未精製源を用意し;さらに末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖が欠損する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチドに対する末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖を有する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチドの割合を増加させる、ことを有する、請求項11に記載の方法。
請求項14
該少なくとも一のFc領域を含むポリペプチドの未精製源は、発現システムに核酸配列を有するベクターを発現することから提供され、該核酸配列は、IgG抗体に翻訳される、請求項11に記載の方法。
請求項15
該末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖が欠損する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチドに対する末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖を有する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチドの割合を増加する段階は、末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖が欠損する少なくとも一のFc領域を含むポリペプチドを除去することによって達成される、請求項11に記載の方法。
請求項16
該除去は、HPLC、レクチンアフィニティクロマトグラフィー、高pHアニオン交換クロマトグラフィー、及びこれらの組合せからなる群より選択される方法によって達成される、請求項15に記載の方法。
請求項17
該レクチンアフィニティクロマトグラフィーは、ガラクトース部分と末端シアル酸との間のα2,3結合に対するよりα2,6結合に対する方が親和性の低いレクチンを用いて実施される、請求項16に記載の方法。
請求項18
該末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖が欠損する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチドに対する末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖を有する少なくとも一のFc領域を含む複数のポリペプチドの割合を増加させる段階が、末端シアル酸がα2,6結合を介してガラクトース部分に連結してなる多糖鎖を有する少なくとも一のFc領域を含むポリペプチドの未精製源を増やすこと(enrichment)によって達成される、請求項15に記載の方法。
請求項19
該増やすこと(enrichment)は、HPLC、レクチンアフィニティクロマトグラフィー、高pHアニオン交換クロマトグラフィー、及びこれらの組合せからなる群より選択される方法によって達成される、請求項18に記載の方法。
請求項20
該レクチンアフィニティクロマトグラフィーは、ガラクトース部分と末端シアル酸との間のα2,3結合に対するよりα2,6結合に対する方が親和性の高いレクチンを用いて実施される、請求項19に記載の方法。
請求項21
該増やすこと(enrichment)は、少なくとも一のFc領域を含むポリペプチドに結合する炭水化物と末端シアル酸との間のα2,6結合を作製する酵素による化学反応によって達成される、請求項18に記載の方法。
請求項22
治療上有効な量の、請求項1に記載のポリペプチドを、患者に投与することを有する、関節炎、血小板減少症、および腎炎からなる群より選択される炎症性疾患の治療方法。
請求項23
それぞれが少なくとも一のIgGFc領域を有する、複数の単離ポリペプチドを含む治療組成物を炎症性疾患の治療の必要のある患者に投与することを有する炎症性疾患の治療方法であって、各Fc領域の第1の部分は、ガラクトース部分が2,6結合によって各末端シアル酸部分に連結してなる各炭水化物鎖を有し;該治療組成物の投与量は、それぞれが少なくとも一のIgGFc領域を含み、ガラクトース部分が2,6結合によって各末端シアル酸部分に連結してなる各炭水化物鎖を有する各Fc領域の第2の部分を有する、複数の単離ポリペプチドを有する第2の組成物の投与量より少なく;さらに該第1の部分は、該第2の部分より大きく、これにより該治療組成物の投与量および該第2の組成物の投与量が実質的に同じ程度にまで炎症を抑制する、または該第1の部分は、該第2の部分より大きく、これにより該治療組成物が同じ投与量の該第2の組成物より実質的により高い程度にまで炎症を抑制する、治療方法。
請求項24
哺乳動物の免疫抑制活性を得るのに十分な量のシアル化糖タンパク質を含むように配合される、Fc領域を有する糖タンパク質を含む組成物。
請求項25
該組成物は、約5%以上の量のシアル化糖タンパク質を含む、請求項24に記載の組成物。
請求項26
該組成物は、約10%以上の量のシアル化糖タンパク質を含む、請求項24に記載の組成物。
請求項27
該組成物は、約30%以上の量のシアル化糖タンパク質を含む、請求項24に記載の組成物。
請求項28
該組成物は、約5%〜約30%の量のシアル化糖タンパク質を含む、請求項24に記載の組成物。
請求項29
該シアル化糖タンパク質は、1つ以上の末端シアル酸残基またはその類似体を含む、請求項24に記載の組成物。
請求項30
該末端のシアル酸残基は、α2,6結合によって糖タンパク質に結合する、請求項29に記載の組成物。
請求項31
約5%〜約30%の量のシアル化Fc含有糖タンパク質を含むように配合されるIVIG由来組成物であって、該シアル化糖タンパク質は、1以上の末端シアル酸残基がα2,6結合によって該糖タンパク質に結合してなる、組成物。
請求項32
少なくとも1つの末端シアル酸残基、もしくはその類似体が、α2,6結合によって糖タンパク質に結合してなる、組み換えFc糖タンパク質、またはそのフラグメント。
請求項33
297番目のAsnにN−結合型炭水化物を有する組み換えFc糖タンパク質であって、該炭水化物は、1つ以上の末端シアル酸残基がα2,6結合によって結合してなる二分岐型の(biantennary)GlnNac2、Man3、GlcNAc2、Gal2構造を有する、組み換えFc糖タンパク質。
請求項34
該Fc領域がIgGまたはそのサブクラスである、前記請求項のいずれか1項に記載のFc含有糖タンパク質。
請求項35
請求項24に記載の糖タンパク質を含む薬剤調製物。
請求項36
請求項35に記載の薬剤調製物を用いて患者の炎症性疾患を治療する方法。
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